真言宗 豊山派 醫王山 遍照院 寛益寺    新潟県長岡市逆谷

文化財修理報告書  新潟県指定文化財
迷企羅大将(本体)藤原時代 桂材 本体一木作り 高さ約96cm    
長期にわたり保存するための修理であります。
○必要以上の復元はせず、劣化状態と修理箇所が解るよう、また損傷のない木地表面汚すことなく仕上げる。
概要と像の状態(修理前)
○昭和27年地滑りの土砂災害のための破損復元修理があり、それが今回の地震よる大きな破損を免れたようである。
○化仏断裂と虫食い、害虫は毛深シバンムシ。
○全体に漆で補強がなされている。 漆による補強はかなり効果あり。
○修理箇所の化粧仕上げはパテのような材質の上に古色されている、絵の具の種類は解らない。
○昭和の修理は大修理であり復元箇所も多い。像の表面はパテによる表面処理がなされている。写真で虫食い穴栓のない部分が昭和の復元修理の跡である。
○虫穴の修理はなされておらず補修されたパテの表面5センチ平方に7個ぐらいに錐の様な道具で虫穴を表現してあった。 像全体に当時から相当量の虫穴があったともわれる、作られた虫穴は修理箇所のカモフラージュであろう。 害虫の侵入は昭和27年以前である。
○断裂した足首を接続修理されたと思われるが、空洞部分が大きい。
○倒れた原因は地震によるものであるが、台座と框、本体の重量バランスが悪い。框を大きくするか重くする必要がある。
○安底羅大将と迷企羅大将は表面の漆補強の漆の分量に大きな差があり迷企羅大将では非常に少ない、そのせいか迷企羅大将は虫穴が非常に多い。パテの付け方も大きな違いがある。
○足首より下足指先まで昭和27年の補足修理である。本体とよくマッチしており上手である。
○左腕も後の補足であり虫穴の再現がなければ非常に上手でよく分からない。 さすがであるが、修理師によってかなりの差があるのには驚かされる。 同じ工房での修理であるが安底羅大将と違いアセトンによるパテの変色もなかった。
○台座は昭和27年新調されたものである。
修理材料
○檜材・白樺材・生漆・杜の粉・チタン粉末・顔料・松煙・エタノール・アクリル樹脂・アセトン
修理方法
○接着は全て漆。
○殺虫処置は燻蒸と薬剤にて行った。
○エタノールによる殺菌の後アクリル樹脂注入(パラロイド溶液役10%を2回から4回)溢れた樹脂は残さずふき取る。
○虫穴は埋め木、欠損部分は極力埋め木とするが場所や形によっては漆木屎を使用。
○埋木j準備と表面補強のため樹脂が乾くと虫穴に生漆または錆漆を溢れないように充填溢れたならば完全にふき取る。(テレピン油で薄めての使用もあった)
○虫穴木栓の切断後、隙間には漆木屎を埋め表面を整え仕上げ彩色をした。 今回は色漆を使用した。

補足修理箇所
なし
 材の調査
 奈良県森林技術センター(本体主要部分の調査)
お寺様への仏像拝観時にはお心ずかいよろしくお願いいたします。  伊谷
修理前
修理前
修理前 穴栓の無い所が昭和27年時の復元補修箇所。
外に溢れぬ様細い針を使って樹脂をたらし込む。 埋め木の状態

埋め木の状態
完了 カモフラージュのために作られた虫穴は、この先の保存に影響はないのでそのまま残すことにした。
完了  昭和27年の修復の祭カモフラージュのために作られた虫穴。
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